Star.25 一つの決着

「・・・こんなところかしら」
 機械兵士達を大方片付けた明莉とみなみ。汗をぬぐって呼吸を整えた。
「それにしてもみなみ・・・よくまあ素手で・・・」
 ぼそりと呟く明莉に、自慢げな笑顔を見せるみなみ。
「あんたこそ、射撃上達したじゃない」
「いや、嬉しいけどさっきのは褒めたというかむしろ・・・」
 そんな会話をしていると、突然聞き覚えのある声がした。
「こんにちは〜、お嬢ちゃんたち」
「!!?」
 振り返った二人の目に飛び込んできたのは、
「カペラ・・・!!」
「やっぱ雑魚じゃ足止めにもならないか〜。ずいぶん引っ掻き回してくれちゃって。これ以上のオイタは、お姉さんが許さないわよ?」
 ウインクを飛ばしてみせるカペラ。・・・一瞬寒気が走ったのは気のせいだろうか・・・
 しかしその表情は一瞬で冷たく変わり、いきなり両手を振るった。すでに爆弾を指の間に挟んでいたのである。
「きゃあ!!」
「安心おし、殺しゃしないよ。特に『宿主』さんはね。二人まとめてマスターに突き出してやる!」
 目にも留まらぬ速さで飛んでくる多数の爆弾。二人は勘だけを頼りに転がるようにして避けていく。
「そうは・・・いかない!!」
 明莉は体勢を立て直し、続けざまに銃を撃った。しかしそれも爆風の壁に阻まれてしまう。
「なめるんじゃないよ!!」
 さらに多くの爆弾が降り注ぐ。撃ちながら横っ飛びにかわす明莉。右へ右へ・・・
「ちょこまかと! ・・・!?」
 カペラは気づいた。さっきから明莉しか相手にしていない・・・!
 みなみは左の死角から、爆風を目くらましに接近していた。一気にカペラの懐に飛び込み、そしてそのまま、
「はぁああ!!」
 鋭い正拳突きを腹に浴びせた。
「げほっ・・・」
 後ずさるカペラにさらに迫るみなみ。
「あんたの弱点は、近距離戦に持ち込まれたら打つ手がないことよ!」
 さらに拳が飛ぶ。が、カペラはそれを受け止めた。
「なめるなって言ったでしょう、お嬢ちゃん?体術だってできないわけじゃないのよ!」
 激しい組み手が繰り広げられる。一撃一撃が重い・・・相手の熟練度のせいだけではなく、カペラの中身が機械だからだ。しかし、押されつつもみなみは余裕だった。
「そうね・・・訂正するわ。あんたの弱点は、目の前以外の場所に気を配れないことね」
「何っ!!?」
 その台詞が終わると同時に、ひときわ大きな銃声が響いた。明莉がカペラの背中を撃ち抜いたのである。
「ぐ・・・っ」
 一瞬硬直した後、カペラはどっとうつぶせに倒れた。二人はその姿をしばし見つめる。
「・・・やったわね・・・」
「う・・・ん」
 みなみはそっとカペラに近寄る。
「ホントに上達したわね、明莉。あの激しい動きの中で、背中の中心を正確に撃ち抜いてる」
 急に足の力が抜けた明莉は、崩れるように床に座り込んだ。
「い、一瞬だったし・・・そんな、で、でも良く考えたら、みなみに当たってた可能性もあったんだよね?」
「何よ・・・考え無しだったの?」
「だって、みなみがやられちゃうって思ったら体が勝手に・・・」
 だんだん涙目になってくる明莉。みなみはしゃがみこむと、その肩にそっと手を置いた。
「ありがと。あんたが決めてくれるって信じてた」
「・・・みなみぃ〜」
 泣きじゃくる明莉の頭をよしよしとなでるみなみ。が、しかし、
「・・・美しい友情って奴ね」
「!!!」
 カペラの声がした。二人は驚いて身構えたが相手はもう起き上がらず、首だけをこちらに回していた。
「安心しなさい・・・あたしはもう・・・動けないわよ。ただ・・・あたしを倒した・・・ご褒美に、いいこと・・・教えて・・・あげる。
 そこの・・・転移装置に・・・こいつを入れて・・・起動しなさい。その先に・・・面白いものが・・・あるか・・・ら・・・」
 カペラは震える手で懐からICチップを取り出した。それを受け取って握り締める明莉。
「待って明莉、罠かもよ!?」
「平気。みなみと一緒なら怖くないよ」
 確信に満ちた瞳。みなみはやれやれと頭をふった。
「分かったわよ・・・あんたには敵わないね」
 二人は同時に立ち上がり、走り出した。