Star.7 突入

「構えておいたほうがいいよ。いつ奴らが出てくるかわからないからね」
「う、うん」
 隊員の一人が明莉に助言した。全員が息を潜め、施設内に突入する・・・
「!」
 数体の機械兵士がいっせいにこちらを向いた。警告音が鳴り出す。
「はあっ!!」
 気づくが早いか北斗と怜が真っ先に飛び出していき、それぞれの剣で機械兵士たちを両断していった。明莉もあわてて構えなおすが、そのときにはもう敵兵はみな倒れて動かなくなっていた。
「す、すご・・・」
「こんなもんは序の口だ」
 鞘に剣を収め北斗が言った。
「それで、どうするって?」
 言いながら端末を開く怜。部屋の奥の通路の先にやや広い空間がある。
 床の中央のタイルだけ、同心円の模様のついた青いものだ。それもかすかに光っている。そして奥の壁にはモニターと操作パネル。
「こいつの上に乗ると、対応した別の部屋にワープできるのさ」
 別の隊員がそう説明した。
「進んでるんだね、ここの技術・・・」
「感心してる場合か」
 目を丸くする明莉につっこむ北斗。
「兄貴の地図にも、行き先までは書いてねえな・・・どっちにしろ、変えられるようになってるはずだしな」
 怜は自分の端末をパネルにつなぐ。北斗は無線のスイッチを入れた。
「コウ兄、聞こえるか? 転移装置のデータを転送するから、行き先がどこだか調べてくれ」
『分かった。やってみるよ』
 怜の端末の画面が目にも留まらぬ速さで点滅している・・・止まった。
『まずいな・・・機械兵士どもの詰め所だ』
「そんな! なんでそんなところ!?」
「考えてみれば当たり前だ。ここが出入り口ってことは、外へ戦闘に出される兵士のいる所と直通になってる、というのが妥当だろ」
 冷静に分析する北斗。
「行き先、変えられるか?」
『それは難しいな。各部屋のコード番号とかいろいろ割り出さなきゃならねえし・・・そうとう時間がかかるぜ』
「分かった、大丈夫だコウ兄。正面突破する。ただ他の装置のつながりとかを調べてくれると助かる」
『了解。何かあったらまた連絡よこせよ』
 無線通信はそこで切れた。北斗は目線でみなを促し、真っ先に装置に足を乗せた。

「ちっ! 予想はしてたが、数が多い!!」
 転移装置の向こうには、それこそ何百とも分からない兵士達が待っていた。いっせいに鳴り出す警告音で鼓膜が破れそうだ!
「北斗様、怜様! 我々が先行し道を開きます。救出に向かってください!」
 隊員の一人が声を張った。他の隊員もそれに倣って敬礼する。
「・・・頼むぞ」
 北斗は前方を・・・鉤爪を振りかざし向かってくる機械兵士達を睨みながら言った。怜もうなずく。そして明莉を振り返った。
「おまえはどうする」
「・・・一緒に行く」
 怜が頷くのと同時に、隊員たちがいっせいに機械兵士に切りかかって行った。その後ろを走り抜ける3人。
「あっちに転移装置がある!」
 どうにか滑り込む。一瞬で視界が反転し、感覚が戻るとさらに機械兵士達が。先ほどより数は多くなく、入り組んだ廊下にまばらに立っている。
「くそっ、蹴散らすぞ!」
 3人はまたも走り出す。明莉も今度こそ銃を構え、撃った。兵士の腕や肩に当たるが、倒れない。
「頭か胸を狙え!」
 北斗が叫んだ。怜は剣を振りながら必死に端末を操作している。
「左だ!」
 扉の中に駆け込むと、その中にあったのは実験室のような施設だった。
「ここは・・・」
 北斗が顔を歪めた。いつも冷静な顔をしているだけに、その表情は際立って見えた。不機嫌以上の何かがある。すると、無線に連絡が入った。
『お前ら、今どこだ?』
「コウ兄! 今・・・」
「ルームナンバーC315だな。外の廊下の位置関係とこの装置からするに」
 言葉に詰まった北斗に怜が助け舟を出した。
『そうか! なら部屋を出てつきあたりを左へ行け。実験体収容区域はその転移装置の先だ』
「サンキュ、兄貴。行くぞ!」
 怜は2人を促した。

「ねえ!さっきの装置ってなんだったの!?」
 明莉は銃を撃ちながら聞いた。
「・・・採取したヒト細胞を、あそこで培養するんだ。ゆくゆくはそれがプレヒューマンの皮になる」
 説明する怜の表情は暗い。
「でもなんでそんなことするんだろう・・・わざわざ手間かけて人間の皮を被せなくても、他にいい材料があるんじゃないの・・・?」
「奴らは『不死の命』を造る事を目指してる。プレヒューマンはその第一段階だからな、できるだけ生身の人間に近い構造をしている必要があるんだ。弱点の頭は脳・・・思考回路の中枢。胸はエネルギー回路の中心で、心臓の役割ってわけだ」
「・・・なるほど」
「翼もその素材にされるのさ・・・里の人間は先祖が先祖だけに、特殊な力をもってる可能性が高い。もちろん受け継いでないやつもいないわけじゃないが、そういうところが奴らに狙われる理由のうちの一つなんだよ」