Star.0 序章-夜更け

 現場はものものしい雰囲気に包まれていた。行きかう野次馬。右往左往する消防士。
「どうなってるんですかこれ・・・『火災発生』だったんじゃ!?」
「爆発事故並み、だね」
 目の前の惨状に愕然とするお付きと思われる青年と、冷静に観察する少年。
「陽一(ひいち)様、どうします・・・」
「決まってるだろ、生存者を捜せ。『あれ』の宿主がそう簡単に死ぬわけがない」
「は、はい」
 青年はあわてて走っていった。その後姿を尻目に、少年――陽一は、今は数本の消し炭と化した1件の家を見つめた。
「聖人(まさと)・・・」
 陽一が呟いたのはこの家の元家主、そして彼の親友でもあった男の名であった。
こんなことがなければ、今でも愛する家族とともに平凡な暮らしを送っていたはずである。
「全部僕のせい、だな・・・あいつを止められなかった、僕の・・・」
「陽一様!」
 そこへ青年が戻ってきた。
「消防士に確かめました。生存者は・・・あの子だけだそうです」
 その指差す先には、運ばれていく一人の幼女。担架からはみ出た右手には、不思議な青白い痣が見えた。
 陽一の冷静な顔は崩れ、唇をかみ締めて空を見上げた。
「・・・ごめんよ」
 満天の星空。懸命に輝く一つ一つが『いのち』に見える。

「・・・いつになったら、夜が明けるんだろうな」